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不動産の活用は、相続対策の王道と言われています。
しかし、ポイントを押さえておかないと本末転倒になる危険があります。
今回は不動産を活用した相続対策の基本的な考え方についてお話していきます。
相続対策の40%以上が不動産
マイホームや賃貸用のアパート・マンション、駐車場など、
何らかの「不動産」をお持ちの方が多いと思います。
不動産は現金同様、私たちの関わりの深い財産の一つです。
不動産を使った相続対策には様々な効果が期待できます。
賃貸住宅の建築や中古物件の売買がさかんに行われているのは、
相続対策によるものが理由の一つです。
また、節税対策では、現金や有価証券にはない独特の評価方法があり、
効果的に相続税を減らすことができます。
近年では、平成27年の相続税制の改正等によって
納税者の現金・預貯金等の割合が増加する傾向にありますが、
相続財産の40%以上が土地・建物といった不動産と、
まだまだ相続財産に占める不動産の割合は高いです。
相続対策で不動産のことを考えることは、
相続全体を考えると言ってよいくらい重要なことです。
しかし、不動産による相続対策を考える前に、
皆さんに一つお伝えしたいことがあります。
それは、相続トラブルの多くが不動産が原因となって起こっている!
ということです。
主に挙げられる2つの原因
分割時の共有
不動産は「分けにくい」財産の代表格です。
現金は1円単位で分けることができます。
また、有価証券も1株や1口単位でわけることができるため、
争いになることは比較的少ないものです。
一方、不動産は、場合にもよりますが土地を分けるぶんにはいいですが、
賃貸マンションを半分に分けて相続するわけにはいきません。
その際、共有により分割を行う方法があります。
「相続人で仲良く共有にする」というケースです。
確かに共有で相続をすると、持分上は平等にできますし、
不動産売却時には、売れたお金を持ち分で分けることもできます。
しかし、次のようなケースを考えてみてください。
3人兄妹の例
相続人には長男、次男、長女の3人がおり、
父はなくなって、相続が発生。
現金はほとんどなかったが、
総戸数9戸の賃貸マンションを持っていました。
3人で3分の1ずつ相続すれば、1人あたり3戸分の家賃を受け取れます。
将来、それぞれの老後の費用も必要なため全員が合意をし、共有で相続しました。
その後、数年が過ぎた頃、次男は老人ホームへ入所したいと考え、
その費用を賄うために不動産を売りたいと長男と長女に相談しました。
長男:先祖代々守ってきた不動産を売るなんて、とんでもない。
長女:毎月家賃が入ってくるほうがいいから、売りたくない。
次男:売らないとホームの費用が払えない。いったいどうすればいいんだ。
このようなケースは、実に多く見受けられるトラブルです。
不動産を共有すると、共有者1人の判断だけでは不動産を売ることも貸すことも、
大規模な修繕も行うことができなくなります。
不動産を売るには共有者全員が合意をする必要があります。
相続する時点では問題がない場合でも、
将来は各人の状況により不動産に対する考え方も大きく変わります。
さらに、その先を考えてみましょう。
共有者である長男、次男、長女に、
それぞれ配偶者と3人の子供がいたとします。
その後、共有者3人が亡くなったとします。
もし法定相続人がこの不動産を相続する場合、
共有者は何人になっているでしょうか?
答えは、「3人×相続人4人=12人」です。
結果、この不動産は12人の共有財産となります。
前述の通り、共有状態の不動産を売りたい場合は、
12人全員の合意が必要です。
1人でも反対する人がいたら、売ることができません。
実務上、12人全員の合意をとることは至難の業です。
不動産を共有してしまうと相続人がどんどん増え、
収拾がつかなくなる事態におちいります。
解決には多くの費用と時間がかかることになるでしょう。
不動産による相続対策を考える際には、
「誰に」「どのように」相続していくことをしっかり考えていく必要があります。